介護認定調査

そもそもどうやって介護度が決まるのか?

介護申請できる年齢や条件

直接区役所や市役所に申請書を提出するか、居宅介護支援事業所のケアマネジャーや地域包括支援センターの職員が代行申請するパターンが一般的です。

①65歳以上なら特に何も問題なく申請できます。
②40歳以上65歳未満の方は16の特定疾病に限られます。

  1. がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)※
  2. 関節リウマチ※
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
    【パーキンソン病関連疾患】
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症※
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

参考URL:https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html

介護認定調査は全国一律の基準

認定調査員マニュアル

結構難しめの内容ですが、これがマニュアルです。このテキストに沿って、認定調査が行われます。私たちケアマネジャーが認定調査を行う時はこれが基準になります。もちろん行政も同じです。

一次判定は介護の手間できまる

要介護認定は、一次判定ソフトによる判定から、介護認定審査会における認定まで、原則として、要介護認定等基準時間と呼ばれる『介護の手間』の判断によって審査が行われる。

最初の段階となる一次判定では、認定調査における基本調査 74 項目の結果から、要介護認定等基準時間や中間評価項目の得点を算出し、さらに申請者のにおける介護度の結果が示されます。

介護の手間(介護の時間)
要支援1要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態
要支援2
要介護1
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護2要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護3要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護4要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護5要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態

 

〇 要介護認定の一次判定は、要介護認定等基準時間に基づいて行いますが、これは1分間タイムスタディという特別な方法による時間であり、実際に家庭で行われる介護時間とは異なります。

○ この要介護認定等基準時間は、あくまでも介護の必要性を量る「ものさし」であり、直接、訪問介護・訪問看護等の在宅で受けられる介護サービスの合計時間と連動するわけではありません。

参考URL:https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo2.html

要支援2と要介護1は、介護の手間(介護の時間)が同じ

厚労省のsiteには、このようにあります。

(1) 疾病や外傷等により、心身の状態が安定せず、短期間で要介護状態等の再評価が必要な状態

  • 脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期で不安定な状態にあり、医療系サービス等の利用を優先すべきもの
  • 末期の悪性腫瘍や進行性疾患(神経難病等)により、急速に状態の不可逆的な悪化が見込まれるもの 等

これらの状態の判断は、運動器の機能向上のためのサービス等、個別サービスの利用の適格性に着目して行うのではなく、要介護状態が変動し易いため予防給付そのものの利用が困難な事例が該当すると考えられる。

(2) 認知機能や思考・感情等の障害により、十分な説明を行ってもなお、予防給付の利用に係る適切な理解が困難である状態

  • 「認知症高齢者の日常生活自立度」が概ねⅡ以上の者であって、一定の介護が必要な程度の認知症があるもの。
  • その他の精神神経疾患の症状の程度や病態により、予防給付の利用に係る適切な理解が困難であると認められるもの

少しわかりずらいので簡単にいうと、こういう事です。

要支援2と要介護1は、介護の手間(介護の時間)が同じなのに、それを分けるポイントは、
① 認知症の有無
② 状態の不安定性

つまり、改善見込みの方は要支援2、認知症症状がある方等は要介護1といった具合です。

二次判定

一次判定の結果に主治医の意見書の内容を考慮し、介護度が決まります。

5名ほどで構成される介護認定審査会によって、介護度を検討されます。

介護度が出るまでのプロセスまとめ

①申請する

②認定調査を受ける

③一次判定 → 認定調査の内容をコンピューター判定し、介護の手間(介護の時間)を判断する

④二次判定 → 一次判定を基に主治医意見書を考慮し、介護度が決まる

⑤手元に介護度や有効期間が記載された被保険者証が届く

 

認定調査の基準がばらついているように感じる?

このようにメディアでも取り上げられたりしています。個人的にも納得のニュースです。ばらついていなければ、こんな状況には至らないとすら感じます。

具体的にばらつきを感じる事例

末期がん

横浜市看取り期の在宅療養サポートマップ末期癌の場合は以前は要支援2が出ることが非常に多かったと感じます。最近は要介護1以上が出ることが多いように感じます。

癌の種類にもよると思いますが、急に状態が低下するパターンが多いなと感じます。

比較的ぎりぎりまで日常生活動作は保たれるものの、急に状態が低下するため、要支援認定が出た際は、すぐに区分変更をかけるというパターンが多かったです。「またか」といった感じでした。左の図は、横浜市が作成した「看取り期の在宅療養サポートマップ」の図です。一番上は癌の曲線です。見てもお分かりのように、状態の急変が顕著な曲線になっています。

参考URL:https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/iryo/zaitaku/taiinchouseitool.files/0017_20190704.pdf

そもそも急変が予想されるなら要支援ではないだろうと思うのですが、要支援が出る方が多かったです。

ここ最近は末期癌の方は申請すると要介護1以上が出る事が多くなってきているように感じます。現場のケアマネとしては、ベッドがレンタルできる要介護2か、最低でも要介護1以上が出てほしいと思っています。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護等は、正にターミナルの方には利用したいサービスです。要介護1以上でなければ利用できません。要支援では利用できないのです。しかも自費になれば、かなりの高額。

他の保険者ではどうかわかりませんが、うちの事務所では、末期癌の方は要介護1以上が出るようになってきた印象です。きっとこの問題は行政も把握しており、改善したのではないかと思っています。

最近のよくある傾向

横浜市の場合、一時判定を教えてくれる区と教えてくれない区があるのですが、そもそもそれも同じ保険者なのに区の対応が違うってどうなんだ?と突っ込みたいところですが、それはさて置き、一次判定要介護1が出ている場合、以前は大概は要介護1がそのまま出るというのがパターンでしたが、なぜか最近では要支援2に落ちる方が多いです。

一次判定後の二次判定介護認定審査会で主治医意見書を照らし合わせて介護度が決まる仕組みですが、そこで介護度が落ちるという事になります。なんだかきな臭い感じがしてなりません。

プロセスは変わっていませんが、判断基準が明らかに変わったと感じます。

実際にあった事例

  • 明らかに認知症があり生活に支障が出ているにもかかわらず、要支援1の判定 → 区分変更中
  • 99歳の方で、転んだことも忘れており、移動も見守りにもかかわらず、一次判定非該当、二次判定要支援1 → サービスが何とか受けられる単位数の為、そのまま受け入れる
  • 退院後、明らかに入浴の介助を始め、生活のあらゆる場面で支障をきたしている状況にもかかわらず要支援2 → 区分変更後、要介護2
  • 末期癌で申請したところ要支援2 → 保険証が届いた直後に状態急変し、区分変更 → 要介護3

 

一番の問題は、要支援という介護度が出た直後に、区分変更をかけて、要介護度が上がるケースが少なくありません。正直、これってどうなの?という思いです。

本人の状態は変わっていないにもかかわらず介護度が変わるのです。これって、おかしいですよね。実際にこのようなことがあるのです。最初あら細かく調査してほしいです。とても恥ずかしい状況です。せこい!

では、要支援と要介護1以上とではなにが異なるのか?少し整理してみます。

要支援と要介護の違い

①限度額が異なる
要介護度改定後(令和元年10月から)
要支援15,032単位
要支援210,531単位
要介護116,765単位
要介護219,705単位
要介護327,048単位
要介護430,938単位
要介護536,217単位

介護度が低く出ることで、限度額が少なくなります。つまり、単純に保険で利用できる範囲が小さいので給付が抑制される。

②利用者が必要なサービスを受けられない

これは根本的な問題です。要介護かと思ったが要支援だった。そうなればデイサービスの回数や訪問介護の回数は制限があります。

要介護1なら一日型のデイサービスは週4回は利用可能です。要支援1であれば週1回、要支援2であれば週2回です。

簡単にいえば要支援という介護度は制限が多いのです。末期癌のように重篤になる可能性のある方の場合は、要支援では利用できるサービスはかなり少ないです。急変時に介護度の区分変更をかけても、認定調査までにご逝去されてしまうケースも少なくありません。

四角四面ではなく、もう少し考えていただきたいと感じます。

③ケアマネの報酬が減る
 

要介護度

改定後(令和元年10月から)
基本単位数特定加算Ⅰ特定加算Ⅱ特定加算Ⅲ特定加算Ⅳ
要支援1~2431単位
要介護1~21057単位500単位400単位300単位125単位
要介護3~51373単位500単位400単位300単位125単位

トライドケアマネジメントが仕事をしている横浜市では居宅介護支援の単価は11.12円です。

トライドケマネジメントの加算は特定Ⅱ・Ⅳです。

要介護1~2の利用者の報酬は、(1057+400+125)×11.12=17,591円

要支援1~2の利用者の報酬は、431×11.12=4,792円ですが、包括の給付管理の費用が引かれるので、居宅介護支援事業所の報酬は4,216円
直接請求できればただでさい安い報酬が減らなくて済みます。

要介護と要支援とでは報酬の差が著しい。そもそも要支援の報酬が安すぎることが問題です。

④要支援が増えたことで受入れが困難に

要支援が増えたことで、トライドケアマネジメントでもそうですが、要支援の依頼が非常に多くなりました。包括も複数の居宅介護支援に依頼するも受けてもらえない状況のようです。

トライドケアマネジメントは、要支援でも要介護でも基本お断りすることはないのですが、現在、常勤換算5人で要支援者の方だけで50名を超える状況になり、先日久しぶりに要支援の相談をお断りをさせて頂きました。要支援とはいえども、3ヶ月に一回以上の定期訪問や継続的なケアマネジメントを行っております。初回加算300単位はつくものの、初月以降は4,216円でボランティアというべき金額です。

もちろん総合事業の方は件数にカウントしませんが、そうはいっても労力は変わりありません。であれば、やはり要介護35件、要支援8件は一定の基準のように思います。つまり、それ以上の要支援を担当することは、現実的ではありません。

きっと今後も包括は苦労するように感じます。かといって、要介護を専門とする居宅介護支援事業所のケアマネが、要介護の枠を使って要支援ばかり対応するということにはなりません。

困ったものです。

まとめ

行政は抑制しているとは言わないでしょうが、結果らみて抑制しているように見えます。

要支援判定が多ければ多いほど、かかる費用は安く済むと打算的に考えているように感じます。
メディアで取り上げられている時点で、全国一律の基準がゆがみ始めたと捉えてよいのでしょう。住民に周知せずに。

ですが、区分変更が増える事は間違いないでしょう。明らかに要介護状態にもかかわらず要支援判定が出ているケースが多いからです。10年以上ケアマネをやっていればどの程度の介護度がつくか等、ある程度予測がつきますから。

1人の介護度を出すのにかかる費用は数万円と聞いたことがあります。調べたことはありませんが、間違いなく万単位ですよね。
費用をかけて介護度を出したにも関わらず、再度要介護認定の手続きを踏むことで、更に費用がかかります。こういった無駄を踏んでもおとなしく受け入れる人が多ければ問題にならないあたりが残念です。

認定調査費、主治医意見書の費用、審査会の費用、各種事務手続きでかかる費用等々。非効率に思えます。

現場のケアマネ目線で考えても、上記のような問題が容易に浮かんでしまいます。もう少し現実的に考えていただきたいです。
もはや末端でせこく費用を削減をする考えは早くもひずみが生じています。もっと抜本的な部分にメスを入れる必要があるのではと感じてなりません。

何年前でしょうか?認定調査の内容が変わり、軒並み要支援が出たことがあり、直ぐに調査内容は修正されました。また同じことをするんですかね?

消費税増税とか国会議員を減らすとかではなく、現場目線の意見です

➀介護度が軽くなったら、そのケアマネジメントを評価する仕組みを作る。
②介護度が軽くなったら、そのケアマネジメントにかかわったリハビリやヘルパー、デイサービス等を評価する仕組みを作る。
③要支援の報酬を上げる。
④地域包括を運営する法人が自社の居宅介護支援に依頼するケースに制限を設ける
→ 流してなんぼの営業マンケアマネがこの業界からいなくなれば無駄なサービスは減ると思います。
介護保険業界が根底から覆る為、無理でしょうね。
⑤そもそも、居宅介護支援をみな独立型にする
→ これは更に無理でしょうね(笑)、でも絶対に効果ありますよ。無駄なサービスが入らなくなりますから。

 

強めの意見ですが、介護や医療を受ける方は、必要なものを必要に応じ最適な事業者から受ける権利を持っていると思います。
きっと利用者やその家族にもケアマネジャーやサービスを見抜く力がないといけないのだと思います。
無駄を省いた適正な仕組みができることで、無駄な費用や無駄な議論は無くなると思います。それができて初めて次のステップなのではないでしょうか?

 

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